連続空間ボーズ系のための向きつきループアルゴリズムの修正

これまでにも,量子モンテカルロ法を用いて連続空間ボーズ系のシミュレーションを行った例がいくつか報告されている. しかし格子系のためのアルゴリズムが数多く報告されバリエーション豊かなのに対して,連続系のためのアルゴリズムは少数であり,それらは複雑である. 本研究では,まずはじめに連続空間のモデルを空間離散化して格子系のモデルへと変換する. そうして得られた格子系のモデルを,格子系のためのアルゴリズムを用いてシミュレートする. 連続空間ボーズ系の例として希薄ボーズ気体のモデルを用い, 格子系のアルゴリズムとして向きつきループアルゴリズム(DLA)を用いた. DLAは既存のアルゴリズムの中でも適用範囲が広いアルゴリズムとして知られているが,DLAを今回の場合に単純に適用すると, 効率が著しく悪化する. 我々はDLAに修正を加えることにより,この効率を向上させることに成功した. また実際に希薄ボーズ気体のシミュレーションを行い, 有限サイズスケーリングを用いて転移が3次元XYモデルのユニバーサルクラスに属していることを確認し,転移温度の決定方法を示した. 図は感受率χの有限サイズスケーリングを示している. 指数は3次元XYモデルの先行研究によって精度良く求められているものを用いている. (図中のt は相対温度(t=T-TC), Λは系の大きさを特徴付ける長さである.)

感受率χの有限サイズスケーリング

(by 加藤康之)

[参考文献]

Yasuyuki Kato, Takafumi Suzuki and Naoki Kawashima: “Modification of directed-loop algorithm for continuous space simulation of bosonic systems”, Phys. Rev. E 75 066703(1-8) (2007).