ハドロン中のクオーク,金属中の電子,脳のなかのニューロン,道路上の自動車,株式市場の中のディーラー...世界の構成要素が何であるにせよ, 我々の世界は非常に多くの構成要素からできている.多体問題 -多くの要素からなる問題-,は,一般には紙と鉛筆と我々の頭脳だけで解けてはいないし将来解けるようになるであろうという見込みもない.複雑な多体問題は枝葉末節の応用問題にすぎない,といってすますには,我々の世界は枝葉末節の問題で占められ過ぎている.計算機は,解くことのできる多体問題の規模を格段に大きくしてくれる.これによって,我々は世界の真の姿にいくらか迫ることができるだろう.ただ,人間は言葉に表してみない限り,何かを理解したと感じることができない.つまり,計算機の生み出す計算結果から「理解」を生み出すのは,今のところ我々自身の仕事である.