光学格子中にトラップされたボーズ粒子の有効モデルとしてボーズハバードモデルの研究が盛んに行われている. 先駆的な実験的研究では, 粒子数が2 × 105個程度,格子サイズが653程度のものを取り扱っている. 我々は向きつきループアルゴリズムの改良を行い,実験系と同規模の粒子数(1.8 × 105)及びサイト数 (643) のシミュレーションを実装した. この系には調和型のトラップポテンシャルが存在し, これによりトラップの中心から離れるに従って,各サイトのボゾンの平均占有数は減少していく. また低温でt/Uが小さい場合を考えると,図1のような“ウェディングケーキ構造”と呼ばれる複数のプラトーを有する構造が実現される. このプラトーは平均占有数が整数のところに存在し,モット絶縁体的な領域が存在していると考えられる. またプラトー間には平均占有数が非整数になっている領域が存在し,位相がそろった超流動的な領域が存在していると考えられる. この超流動的な領域は図2に示すようにモット絶縁体的な領域で隔てられている. 本研究ではこの様にモット絶縁体的領域に隔てられた複数の超流動的領域間の位相の相関に着目して 計算を行った. 比較的大きな系のシミュレーションの結果,超流動的領域間の相関と同一領域内の相関はほぼ同じ温度で出現することが分かった.
(by 加藤康之)
参考文献
Yasuyuki Kato and Naoki Kawashima, “Quantum Monte Carlo method for the Bose-Hubbard model with harmonic confining potential” Phys. Rev. E. 79, 021104 (2009).