ボーズ粒子系

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ボーズ凝縮

ボーズ凝縮は量子多体系に特徴的な現象であり,高温ではミクロな領域の物性を支配しているだけの量子性が系全体のマクロな性質に現れる現象である.古くから知られているのは,ヘリウム4における超流動転移である.フェルミオンも偶数個の粒子が組を形成することで,ボーズ粒子のようにふるまうことができ,例えば超伝導も2個の電子がペアを形成して凝縮した結果生じる現象であり,広い意味でボーズ凝縮の一種ととらえることができる.

巨視的波動関数

凝縮が起こっている状態では,多くの粒子の波動関数の位相がそろうことにより,系全体の状態を単一の巨視的波動関数によって表現することが可能になる.この結果,凝縮状態は1つの巨視的波動関数に対するシュレーディンガー方程式に似た運動方程式で良く記述される.(参考:「擬2次元トラップポテンシャル中ボーズ気体の有限温度転移」)局所的には位相という一つの変数で状態があらわされることになり,個々の粒子が独立にふるまうことはできない.この結果エントロピーの生成が抑えられ,散逸を伴わない系の時間発展を引き起こす.これが,超流動,超伝導である.

調和型ポテンシャル中のボーズ気体(密度分布)
(佐藤年裕氏(物性研))

極低温原子

ヘリウム4の超流動転移はボーズ凝縮の一種と考えられるものの,密度が高く相互作用の強い系である.これに対してボーズ凝縮の説明によく使われる教科書的な希薄ガスにおける凝縮が実際に観測されたのは,比較的最近のことである.レーザー冷却技術の確立(1997年のノーベル賞)が最初のボーズ凝縮相の実現(2001年のノーベル賞)につながった.これは理想的な系に近く,従来の理論的な道具立てによって定量的にも実験と比較可能な数値計算が可能である.

光格子

レーザーの定在波を用いれば,超低温の原子集団を閉じ込めておくポテンシャルとして,単一の極小をもつものだけでなく,周期的なものも作り出すことができ,そのような周期ポテンシャル中(光格子)に閉じ込められた極低温ボーズ系は「理想的な固体」とみなすことができる.これに付随する理論的研究が近年非常に盛んだが,それは,昔から理論的には予想されてきていたが,現実の物質では全く観測されていないか,または間接的にしか観測されていない物理現象(Bloch 振動,Anderson 局在,Mott 転移(参考:「無秩序相においてシャープなピークをもつ光学格子中ボゾンの運動量分布」),など)が実験的に観測可能になったことによる.また,従来の理論では計算不可能だったモデルを光格子で実現することで,一種の「量子シミュレータ」として利用することも議論されている.さらに,格子のパラメータや原子状態をコントロールすることによって,「量子コンピュータ」の基礎とすることなども議論されている.

モンテカルロ法

ただし,そのような可能性が実現するには,まだ多くの障壁を超える必要があり,当面は,実験的に実現されている系が理論的にどのようなモデルに対応しているのかを正確に把握しておく必要がある.我々は光格子系を真に量子シミュレータとして機能させるための準備研究として,光格子実験と量子モンテカルロ法による数値シミュレーションを精密に比較するため,方法論の開発と実際の計算を行っている.(参考:「調和ポテンシャルに閉じ込められたボーズハバードモデルの量子モンテカルロシミュレーション」,「連続空間ボーズ系のための向きつきループアルゴリズムの修正」)